成膜は、必要な材料の薄い層をウェーハ上へ作る工程

半導体は、性質の異なる薄膜を積み重ね、不要な部分を加工して作られます。

INSULATOR絶縁膜

電気を通しにくくし、素子や配線を分離する。酸化物、窒化物などが使われます。

CONDUCTOR導体・金属膜

電極、コンタクト、配線、バリア、シードなど、電気を流す構造を作ります。

SEMICONDUCTOR半導体・機能膜

トランジスタやメモリなどの機能に必要な半導体膜、結晶膜、機能性材料を作ります。

Applied Materialsは、半導体で成膜する材料の例として絶縁体、導体、化合物を挙げ、温度、圧力、電界、磁界、プラズマ、流量、時間などを調整して膜特性を作り込むと説明しています。東京エレクトロンも、素子構造と配線の形成に先立って絶縁膜や金属膜をウェーハ表面へ形成する中核工程と位置づけています。

同じ材料名でも、膜の密度、組成、結晶性、応力、界面、欠陥で電気特性や後工程への耐性が変わります。そのため成膜は、単に表面を覆う作業ではなく、材料特性を設計する工程です。

PVDは、ターゲット材料を物理的に放出して膜を作る

PVDはPhysical Vapor Deposition、物理気相成長の略です。代表方式としてスパッタリングがあります。

  1. 01真空を作る

    不要な気体との衝突や汚染を抑え、材料を輸送できる環境へ

  2. 02ターゲットから原子を出す

    アルゴンなどのイオンを材料へ衝突させ、原子を放出

  3. 03ウェーハへ堆積させる

    飛び出した原子を表面へ到達させ、薄膜として成長

Applied Materialsは、PVDをターゲット材料のスパッタリングまたは気化で金属蒸気を作り、ウェーハ表面へ凝縮させるプロセスと説明しています。スパッタでは、プラズマ中のイオンをターゲットへ衝突させ、放出された原子をウェーハへ運びます。

PVDは高純度の金属・金属窒化膜などに使われます。一方、粒子が飛ぶ方向の影響を受けるため、深く細い穴や複雑な三次元構造では、上部と側壁・底部の膜厚差を小さくする工夫が必要です。実際の被覆性は圧力、電力、基板バイアス、装置構造などで変わります。

CVDは、気体原料の化学反応で固体膜を作る

CVDはChemical Vapor Deposition、化学気相成長の略です。

代表方式エネルギーの与え方と特徴
熱CVD基板や反応空間を加熱し、原料ガスの分解・反応を進める
LPCVD低圧環境で反応と輸送を制御するCVD。炉を使うバッチ方式などがある
PECVDプラズマで反応を助け、熱だけを使うCVDより低温で成膜できる場合がある

CVDでは、一つ以上の気体原料をチャンバへ入れ、ウェーハ表面で分解または反応させ、固体成分を膜として残します。気体の副生成物は排気されます。絶縁膜、半導体膜、金属膜など幅広い材料へ使われます。

ASMはPECVDについて、反応室内の気体からプラズマを作り、そのエネルギーで反応を進めるため、熱CVDより低温で処理できると説明しています。低い熱予算が必要な配線工程やパッケージ工程などで選択肢になります。

ALDは、原料供給とパージを交互に繰り返す

ALDはAtomic Layer Deposition、原子層成長の略です。表面反応が飽和する性質を使い、周期数で膜厚を制御します。

ALDの代表的な1サイクル二種類の反応物を使う概念例です。材料系によって反応物、順序、プラズマの有無は異なります。
  1. 01表面を準備

    反応できる清浄な表面と反応点を用意

  2. 02原料Aを供給

    表面の反応点へ吸着・反応させる

  3. 03パージ

    余分な原料Aと副生成物を排出

  4. 04反応物Bを供給

    吸着した種と反応させ、目的材料へ

  5. 05再びパージ

    余分な反応物と副生成物を排出

  6. 06サイクルを反復

    必要な膜厚まで同じ周期を繰り返す

ASMはALDを、原料と反応物を交互にパルス供給し、その間を不活性ガスでパージする、表面制御型の層ごとの成膜として説明しています。表面反応が自己停止的に飽和するため、一周期あたりの成長量を小さく保ち、周期数で膜厚を精密に制御できます。

ALDは複雑な凹凸や高アスペクト比構造を均一に覆う用途に向きます。ただし、周期的な供給とパージが必要なため、膜厚、生産性、原料利用、装置構成を含めて適用を判断します。プラズマを使うPEALDでは、反応温度を下げたり材料特性を調整したりできます。

PVD・CVD・ALDの違いは、優劣ではなく要求との相性

材料、形状、膜厚、温度、生産性、コストの組み合わせで方式を選びます。

比較観点PVD・CVD・ALDの見方
材料の供給源PVDは主に固体ターゲット、CVDとALDは主に気体として運べる原料を使用
反応の進み方PVDは物理的な放出・堆積、CVDは連続的な化学反応、ALDは分離した表面反応の周期
膜厚制御PVD・CVDは主に時間や供給量などで制御。ALDは一周期の成長量と周期数で制御
複雑形状の被覆一般にALDは高い等方的被覆を得やすい。CVD・PVDも方式と条件で被覆性を調整
代表材料PVDは金属・金属窒化物、CVDは絶縁体・半導体・金属、ALDは極薄の絶縁体・金属・バリアなど
生産性必要膜厚と装置構成による。ALDは周期処理のため、精度と処理時間の両立が課題になりやすい

方式名だけでは膜の良し悪しを決められません。同じCVDでも熱CVDとPECVDでは温度や膜質が変わり、同じPVDでもイオンエネルギーと圧力で輸送方向が変わります。ALDも熱ALDとPEALD、原料、パージ、温度範囲で結果が変わります。

工程設計では、必要な電気特性と信頼性を満たしたうえで、前後工程との整合、装置の処理能力、材料コスト、メンテナンス、安全性まで考えます。

段差被覆とアスペクト比は、三次元構造で重要になる

平らな面へ均一に膜を作れても、深い穴や狭い溝を同じ厚さで覆えるとは限りません。

STEP COVERAGE段差被覆

上面、側壁、底部へどの程度均一な膜厚を作れるかを見る考え方です。

ASPECT RATIOアスペクト比

穴や溝の深さを開口幅と比べた形状指標。深く細いほど原料を内部へ届けにくくなります。

GAP FILL埋め込み

溝や穴を空隙なく材料で満たせるか。入口が先に閉じると内部へ空洞が残る場合があります。

先端ロジック、3D NAND、立体的なコンタクトや配線では、表面積が大きく、深い構造が増えます。ASMはALDの特徴として、異なる表面形状へ精密な膜厚と高いコンフォーマリティを得られる点を挙げています。

ただし、原料が奥まで届く時間、表面反応、副生成物の排出、開口部での消費なども考える必要があります。『ALDなら自動的にどんな構造でも完全に覆える』とせず、形状と反応条件を合わせて評価します。

成膜で管理するのは、膜厚だけではない

目的の機能を得るには、膜の量、質、界面、ばらつきを同時に見ます。

THICKNESS膜厚・均一性

ウェーハ面内、ウェーハ間、チャンバ間で狙った厚さへ入るか。

COMPOSITION組成・不純物

目的元素の比率、残留原料、副生成物、酸素・炭素などの混入を確認。

FILM QUALITY密度・結晶性・電気特性

絶縁性、抵抗、誘電率、結晶構造など、用途に必要な性質を評価。

MECHANICAL応力・密着性

膜が反る、割れる、はがれるなどを避け、前後材料との整合を取る。

TOPOGRAPHY段差被覆・埋め込み

側壁や底部の膜厚、開口の閉塞、内部空洞の有無を確認。

DEFECT粒子・欠陥・界面

粒子、ピンホール、表面粗さ、界面汚染など、信頼性へ影響する要因を管理。

膜厚は分かりやすい指標ですが、同じ厚さでも組成、密度、応力、界面が違えば機能は変わります。装置データと膜厚測定、光学測定、電気測定、欠陥検査、断面観察などを組み合わせて評価します。

成膜前の表面状態も重要です。微量の残留物や自然酸化膜が核形成、密着、接触抵抗へ影響するため、洗浄や前処理を成膜条件と一体で考えます。

成膜工程には、材料・反応・真空・プラズマ・計測の技術が集まる

装置の中では、原料を安全かつ再現よく供給し、表面反応を制御し、副生成物を排出します。

技術・職種主な役割
プロセス材料、温度、圧力、流量、時間、プラズマ条件を調整し、膜特性を作る
装置・機械チャンバ、搬送、加熱、冷却、真空、保守性、生産性を設計・維持する
電気・プラズマ電源、電界、磁界、プラズマ生成と均一性を制御する
材料・化学原料、反応経路、表面化学、副生成物、膜組成を設計・解析する
計測・解析膜厚、組成、結晶性、応力、電気特性、欠陥を測り、工程へ返す
設備・安全特殊ガス、排気、除害、薬液、ユーティリティを安全に供給・管理する

Applied Materials、東京エレクトロン、Lam Research、ASMなどが成膜装置・プロセスを提供しています。デバイスメーカー側では、成膜単体だけでなく、洗浄、リソグラフィ、エッチング、熱処理、CMPとのつながりを見ながら工程を統合します。

半導体の成膜でよくある質問

PVD・CVD・ALDを比較するときの基本を整理します。

半導体の成膜とは何ですか?
ウェーハ表面へ絶縁体、導体、半導体などの薄い材料層を作る工程です。素子、電極、配線、保護膜などの構造と機能を作るために繰り返し使います。
PVDとCVDの違いは?
PVDは固体ターゲットなどから材料を物理的に放出して堆積させます。CVDは気体原料を表面で化学反応させ、固体膜を作ります。材料、形状、膜質などの要求で使い分けます。
CVDとALDの違いは?
CVDは一般に原料を供給しながら連続的に反応・成長させます。ALDは複数の原料を時間的に分け、供給とパージを交互に繰り返して一周期ずつ成長させます。
ALDは一回で原子一層を必ず作りますか?
原子層成長と呼ばれますが、実際の一周期あたり成長量は材料と表面反応によって異なり、完全な一原子層とは限りません。自己停止型の表面反応と周期数で精密に制御することが要点です。
PECVDは何ですか?
プラズマ支援化学気相成長です。プラズマのエネルギーで化学反応を助け、熱だけを使うCVDより低温で成膜できる場合があります。
成膜は一度だけ行いますか?
いいえ。半導体では異なる材料と機能を持つ層を多数作るため、成膜、リソグラフィ、エッチング、洗浄、検査などを目的に応じて何度も繰り返します。

まとめ|供給源・反応・形状から成膜方式を選ぶ

PVD、CVD、ALDは、必要な膜を作るための異なる道具です。

PVD物理的に飛ばす

固体ターゲットなどから材料を放出し、ウェーハへ堆積

CVD連続的に反応させる

気体原料を熱やプラズマで反応させ、固体膜へ

ALD周期的に表面反応させる

原料供給とパージを交互に行い、膜厚と被覆を精密制御

次のエッチング記事では、成膜した層のうち不要な部分をどのように選択して取り除くかを、等方性・異方性、選択比、プラズマの役割から図解します。