ダイシングは、一枚のウェーハを独立したダイへ個片化する工程
ウェーハ上には同じ設計の回路が並び、その間に切断用のストリートがあります。
一枚につながったウェーハを、後工程で扱える個々のダイへ切り分けます。
切断位置、加工負荷、熱、粒子、水、静電気を管理し、ダイへの損傷を抑えます。
ウェーハテストのマップと座標を合わせ、対象ダイをピックアップします。
浜松ホトニクスはウェーハダイシングを、一枚の半導体ウェーハをダイまたはチップと呼ばれる個片へ分離する工程と説明しています。回路形成とウェーハテストの後、パッケージングへ渡す境界に位置します。
ストリートは切断のために確保した領域ですが、位置合わせ用マークやプロセス管理パターンが置かれる場合もあります。切断幅が広いほど一枚から得られるダイ数は減るため、必要な加工余裕と取れ数の両方を考えます。
ダイシング前には、薄化・表面保護・テープ固定を工程として設計する
完成ウェーハをそのまま加工テーブルへ置くわけではありません。
- 01回路面を保護
必要に応じて保護テープを貼り、研削水・粒子・接触から守る
→ - 02裏面を薄化
要求厚さまで裏面研削し、必要なら研削ダメージを除く
→ - 03ダイシングテープ貼付
裏面をテープへ気泡・しわを抑えて貼り付ける
→ - 04リングフレーム固定
テープ外周をフレームへ固定し、搬送と加工を安定させる
→ - 05保護材を除去
工程設計に従い回路面の保護テープを剥がして加工へ渡す
リンテックは、回路面を保護して裏面を薄化し、ダイシングテープでウェーハをリングフレームへ固定してから切断する代表フローを示しています。テープは加工中にダイが飛散・移動しないよう保持します。
薄くしたウェーハは割れや反りに弱く、搬送、吸着、テープ貼付、温度変化の負荷も問題になります。前準備と切断を別工程としてではなく、ピックアップまで含む一体のハンドリングとして設計します。
ブレードダイシングは、ダイヤモンド砥粒を含む薄い砥石で材料を除去する
高速回転するブレードへ加工水を供給し、ストリートに沿って切り進みます。
| 構成・条件 | 加工結果への影響 |
|---|---|
| ブレード | 砥粒、結合材、厚さ、刃先状態が切断幅、加工速度、欠けへ影響する |
| 主軸回転 | 砥石の切削作用を作り、振れ・振動・負荷変動が加工面へ現れる |
| 送り速度 | ウェーハを刃へ送る速さ。速さと加工負荷・品質の釣り合いを取る |
| 切込み深さ | ウェーハを完全切断しつつ、テープや治具への過剰な切込みを避ける |
| 加工水 | 冷却、加工くず排出、刃先状態の維持を助け、清浄度と供給状態を管理する |
ディスコはブレードによるフルカットを、ダイシングテープなどの固定材料まで切り込み、対象物を完全に分割する基本加工と説明しています。一般にブレードを指定深さまで下げ、加工物を通過させて切断します。
ブレードは材料へ接触するため、機械負荷によるチッピングやクラック、振動、加工くずが課題になります。一方、さまざまな材料を直線的に切断でき、加工状態とカーフを観察しながら量産へ適用しやすい代表方式です。
レーザーは、表面を除去する方式と内部へ分割起点を作る方式がある
『レーザーダイシング』を一つのメカニズムとしてまとめないことが重要です。
| 方式 | 原理と特徴 |
|---|---|
| ブレード | 回転砥石で材料を機械的に除去する。加工水と接触負荷を伴い、ブレード幅に応じたカーフができる |
| レーザーアブレーション | 表面へ高エネルギー光を集光し、材料を溶融・昇華させて体積を除去する。非接触だが熱影響とデブリを管理する |
| ステルスダイシング | 透過するレーザーを材料内部へ集光して改質層を作り、外力・テープ拡張で分割する。内部加工で粒子と切断幅を抑えやすい |
| DBG・SDBG | 先に溝または内部改質層を作り、裏面研削で薄化と分割を進める。薄ウェーハ搬送と裏面欠けを抑える狙いがある |
ディスコはレーザー加工を、表面から材料を除去するアブレーションと、内部へ改質層を形成するステルスダイシングに分けています。アブレーションでは加工粒子の付着を抑える保護膜と、その後の洗浄を使う場合があります。
浜松ホトニクスはステルスダイシングを、内部へ分割起点となる改質層を形成するレーザー照射と、外力を加える分離の二段階と説明しています。水を使わない方式ですが、材料の光透過、厚さ、金属膜などで適用条件が変わります。
ダイシングテープは、加工中は強く保持し、ピックアップ時は剥がしやすくする
固定と剥離という反対の要求を、粘着設計とUV照射などで両立します。
ウェーハと個片化後のダイを所定位置へ保ち、飛散・ずれ・振動を抑えます。
リングフレームと一体にし、ダイサ、洗浄、UV照射、ピックアップ間で搬送します。
テープを伸ばして分割を助け、ダイ同士の接触を避け、ピックアップしやすくします。
UV硬化型では照射後に粘着力を下げ、ダイ裏面への負荷と残留物を抑えて剥離します。
リンテックとNittoはUV硬化型ダイシングテープについて、加工中はウェーハとダイを保持し、切断後のUV照射で粘着力を下げてピックアップしやすくすると説明しています。テープは単なる搬送用シートではなく、加工品質を支える材料です。
粘着が弱すぎれば切断中にダイが動き、強すぎればピックアップ時にダイが反る、割れる、裏面へ残留物が付く可能性があります。ウェーハ裏面、ダイ寸法、厚さ、加工水、UV量、保管状態との適合を確認します。
チッピング・クラック・蛇行・デブリは、ダイ強度と後工程へ影響する
表面がきれいに見えても、切断面や内部へ損傷が残る場合があります。
| 代表的な課題 | 何が起こるか |
|---|---|
| 表面・裏面チッピング | 切断端に微小な欠けが生じ、回路領域への侵入やダイ強度低下につながる |
| クラック | 切断端や内部から亀裂が伸び、後の搬送・接合・温度変化で破損する可能性がある |
| カーフずれ・蛇行 | 切断線がストリート中心から外れ、回路や電極、隣接ダイへ近づく |
| デブリ・加工くず | 表面や電極へ付着し、外観、接合、電気特性へ影響する |
| 未切断・過剰切込み | ダイが分離しない、またはテープ・治具を深く加工して保持と装置状態へ影響する |
| ダイ飛び・位置ずれ | テープ保持不足などでダイが移動し、欠け、衝突、ピックアップ失敗につながる |
ディスコは従来のブレード加工で、表面・裏面のチッピングと側面の加工痕がダイの抗折強度へ影響すると説明しています。損傷はダイシング直後だけでなく、後のピックアップ、ダイ接合、モールド、温度サイクルで顕在化する場合があります。
ブレード摩耗、目詰まり、振れ、送り、切込み、加工水、テープ保持、ウェーハ反りを一緒に確認します。レーザーでは焦点、出力、走査、材料吸収、保護膜、熱影響、分割状態を管理します。
洗浄・乾燥は、加工方式とデバイスの耐性に合わせる
水を使う工程と使わない工程では、除去すべき残留物とリスクが異なります。
- 01加工中に排出
加工水や保護膜で粒子の再付着と熱を抑える
→ - 02表面を洗浄
ダイ表面、ストリート、テープ上の加工くずを除去する
→ - 03十分にリンス
粒子、保護膜、洗浄成分を清浄な水で持ち去る
→ - 04乾燥
水滴・乾燥跡を残さず、ダイを動かさない条件で乾かす
→ - 05外観・カーフ確認
欠け、ずれ、汚れ、未切断、テープ状態を確認する
ディスコはレーザーアブレーションで生じる微粒子について、水溶性保護膜で表面への固着を防ぎ、加工後に保護膜と粒子を純水で洗い流す方法を示しています。ブレード装置も搬送、加工位置認識、洗浄を自動化した構成があります。
MEMSの中空構造や水・機械負荷に弱いデバイスでは、洗浄そのものが損傷要因になります。ステルスダイシングは水と表面加工を避けられる選択肢ですが、内部改質と分割が対象構造へ与える影響を別に評価します。
ピックアップでは、ウェーハマップと実際のダイ座標を一致させる
個片化後もダイはテープ上の元の配置に保持され、選択的に取り出されます。
| 工程要素 | 主な役割 |
|---|---|
| マップ照合 | ウェーハテストの座標・ビンと、フレーム上のダイ位置を対応させる |
| UV照射 | UV硬化型テープの粘着力を下げ、剥離負荷を小さくする |
| テープ拡張 | ダイ間隔を広げ、隣接ダイとの衝突と認識ミスを減らす |
| 突上げ・吸着 | 裏面側からダイを持ち上げ、表面側から保持してテープから剥がす |
| 受渡し | ダイの向き、表裏、ビン、トレーサビリティを保ってダイ接合へ渡す |
ウェーハテストで不合格になったダイを除外し、指定した合格ビンだけを取り出します。座標の回転・反転・オフセットを誤ると別のダイを選ぶため、ウェーハID、ノッチ方向、基準ダイ、フレーム情報を管理します。
薄いダイ、大きいダイ、裏面膜やDAFを持つダイは、突上げと吸着で割れ・反り・剥離残りが起きやすくなります。テープ粘着、UV照射、突上げ軌跡、吸着位置、速度を組み合わせます。
薄ウェーハでは、切断と裏面研削の順番を変えるDBG・SDBGも使う
薄くなった円板をそのまま搬送・切断するリスクを減らす考え方です。
表面保護、裏面研削、テープマウント、フルカットの一般的な流れです。
表面から途中まで溝を作り、裏面研削で溝へ到達して薄化と分割を進めます。
内部へ改質層を作り、裏面研削とテープ拡張を組み合わせて薄いダイへ分離します。
ディスコはDBGについて、先にハーフカットを行い、後のグラインディングで薄化とダイ分割を同時に進める方式と説明しています。薄化後のウェーハ搬送を減らし、裏面チッピングと割れのリスクを抑える狙いがあります。
SDBGはステルスダイシングで内部改質層を形成した後に裏面研削し、改質部を起点に分割します。適用はダイ厚さ、材料、表面・裏面構造、DAF、後工程で必要な強度を含めて判断します。
ダイシングでは、位置・切断面・粒子・ダイ強度・生産性を管理する
切断幅だけでなく、後工程で扱えるダイになったかを確認します。
ストリート中心からのずれ、切断幅、蛇行、残り余裕を画像で確認します。
表面、裏面、側面の欠けと亀裂を外観・断面・強度評価で確認します。
摩耗、振れ、負荷、焦点、出力、加工回数と交換・補正履歴を管理します。
加工くず、保護膜、テープ残留物、乾燥跡が表面・電極へ残らないか確認します。
気泡、しわ、浮き、UV照射、ダイ飛び、ピックアップ性を確認します。
送り、切断回数、位置認識、洗浄、刃交換、段取り時間を品質と合わせて最適化します。
加工中の主軸負荷、ブレード位置、切断水、レーザー出力などの装置信号と、カーフ画像、チッピング、粒子、ピックアップ結果を結び付けます。異常が出たウェーハだけでなく、直前の加工と工具寿命を確認します。
同じ条件でも、シリコン、SiC、GaAs、ガラス、樹脂、金属層では硬さ、脆さ、熱、光吸収が異なります。材料と積層構造に合わせて方式、工具、保護、洗浄を選びます。
ダイシングには、精密機械・砥粒・レーザー・粘着材料・画像認識が集まる
個片化の精度とダイ強度を、装置・工具・材料の組み合わせで作ります。
| 技術・職種 | 主な役割 |
|---|---|
| プロセス | 方式、工具、送り、切込み、レーザー、洗浄、テープ、ピックアップを設計する |
| 精密機械・制御 | 主軸、ステージ、位置、高さ、振動、搬送、フレーム保持を制御する |
| 砥粒・工具 | ブレードの砥粒、結合材、厚さ、摩耗、目詰まり、ドレッシングを管理する |
| レーザー・光学 | 波長、パルス、焦点、走査、材料吸収、熱影響、内部改質を設計する |
| 粘着・材料 | 保持、UV硬化、剥離、残留物、DAF、ウェーハ裏面との適合を設計する |
| 品質・解析 | カーフ、欠け、亀裂、粒子、強度、ピックアップ不良を解析する |
ディスコなどがダイサ、グラインダ、ブレード、レーザー加工・分離装置を提供し、リンテック、Nittoなどがダイシングテープと関連材料を提供しています。デバイスメーカーや組立受託企業が製品別に工程を統合します。
半導体のダイシングでよくある質問
切断方式、テープ、欠陥、前後工程を整理します。
- 半導体のダイシングとは何ですか?
- 回路形成とウェーハテストを終えたウェーハを、ダイの間にあるストリートに沿って切断・分離し、個々のダイへする工程です。テープ固定、位置合わせ、加工、洗浄・乾燥、ピックアップまでつながります。
- ブレードダイシングとレーザーダイシングの違いは?
- ブレードは回転砥石で材料を機械的に除去します。レーザーアブレーションは表面を溶融・昇華させて除去し、ステルスダイシングは内部へ改質層を作って外力で分割します。
- なぜウェーハをテープへ貼りますか?
- 加工中と個片化後のダイを所定位置へ保持し、飛散・ずれを防ぎ、リングフレームで搬送するためです。UV硬化型では加工後に粘着力を下げ、ピックアップしやすくします。
- カーフとは何ですか?
- 加工で材料が除去・分離される切断線と、その幅を指します。必要なカーフと位置余裕をストリート内へ収め、回路を傷めずに切る必要があります。
- チッピングはなぜ問題ですか?
- 切断端の欠けが回路領域へ入る、亀裂の起点になる、ダイの抗折強度を下げる可能性があるためです。後工程や使用中の熱・機械負荷で破損につながる場合があります。
- ダイシング後は必ず水洗浄しますか?
- 方式と製品で異なります。ブレードやアブレーションでは加工くずを除去する洗浄が使われますが、ステルスダイシングは水を使わないドライ方式です。水に弱い構造では洗浄負荷も考慮します。
まとめ|切る方式だけでなく、固定・保護・洗浄・取出しまで見る
ダイシングは、ウェーハを後工程で扱える良品ダイへ変える個片化工程です。
ウェーハと個片化後のダイをフレーム上の位置へ保つ
ブレード、アブレーション、ステルスを材料と構造で使い分ける
欠け、亀裂、ずれ、粒子、水分、ダイ強度を管理する
マップと照合し、ダイを傷めずテープから剥がして組立へ渡す
次の個別記事では、取り出したダイを基板やリードフレームへ接合し、電気接続と封止を作る半導体パッケージングを図解します。