1回目の転職が一番重かった

私はこれまでに数回の転職を経験しました。その中で、最も重かったのは1回目です。

自分のスキルや経験が、外の世界でも通用するのか分からない。自分が何者で、何が得意で、何ができる人なのかも、自信を持って説明できませんでした。面接もあまり得意ではありません。

転職によって引っ越しが必要になる可能性もありました。自分の仕事だけでなく、家族の生活まで変わるかもしれない。考えることが多く、簡単には動けませんでした。

それでも転職活動を始め、実際に新しい環境で働いてみると、以前の仕事の進め方や専門知識はそのまま使えました。

仕事は自由にできた。でも、その先にワクワクしなくなった

転職を考え始めた頃、今の仕事が嫌で仕方がなかったわけではありません。ある程度自由に仕事ができ、裁量も増えていました。社内では経験も積み、自分なりに仕事を進められるようになっていました。

一方で、自分の成長という意味では先が見えませんでした。このまま在籍したときの未来を考えても、以前ほどワクワクしなくなっていました。

30歳前後になり、『このままでいいのか』と思うようになりました。私にとって大きかったのは、今の延長にいる自分へ期待できなくなったことでした。

エージェントと話すうちに、停滞感が薄れていった

最初に行ったのは、転職エージェントへの登録です。何度も面談を受け、初めて職務経歴書を書きました。

意外だったのは、エージェントとの面談が楽しかったことです。具体的な求人を見ると、自分にも応募できる可能性があると分かります。自分の悩みや今後の方向性を話しているうちに、それまで感じていた停滞感が少しずつ薄れていきました。

まだ転職先が決まったわけではありません。それでも、前へ進んでいる実感がありました。

私が利用したときは、相談するための費用負担はありませんでした。登録したからといって、転職しなければならないわけでもありません。

もちろん、エージェントの意見がすべて正しいとは限りません。紹介された求人へ必ず応募する必要もありません。それでも、自分一人で考え続けるより、社外の求人を知り、自分の経験について第三者と話せたことには価値がありました。

最初の職務経歴書では、自分の役割まで小さく書いていた

職務経歴書は、最初は非常に書きにくかったです。特に難しかったのは、実績を数字で書くことでした。

チームで実行したプロジェクトについても、『自分は全部やったわけではない』と考え、自分の実績として書くことを遠慮していました。チームの成果を、自分一人の成果のように書きたくなかったからです。

今振り返ると、チームの成果を独占して書く必要はありませんでした。プロジェクト全体で何が変わったか。その中で自分は何を担当し、どのような判断や働きかけをしたか。そこを分けて書けばよかっただけです。

私は誠実に書こうとするあまり、自分の貢献まで小さく見せていました。

職務経歴書を書いてエージェントと話すと、自分に足りない経験も見えてきます。仮に転職しないと決めたとしても、現職で次にどのような実績を積めばよいかを考えやすくなります。

社内では当たり前だった仕事が、社外では求められていた

転職活動を始めて意外だったことが二つあります。

一つは、自分が勤務していた会社の知名度や信用が、社外では評価材料になり得ると分かったことです。もう一つは、日々当たり前に行っていた品質管理や製造技術の仕事を、そのまま求める求人が多くあったことです。

私は、自分に特別な経験がないと思っていたわけではありません。ただ、毎日行っていた仕事だったため、それが社外でどのくらい必要とされるのかを知りませんでした。

自分の会社の中だけで働いていると、周りにも同じ領域へ詳しい人がいます。その環境では、自分の知識や仕事の進め方が特別なものには見えません。求人を見て初めて、社内での『当たり前』と、社外で求められる経験は同じではないと分かりました。

新しい職場でも、問題解決の進め方はそのまま使えた

転職後は、以前担当していた製造プロセスの知識がそのまま役に立ちました。

プロセスのメカニズムを理解する。起こりやすい不具合から原因を推定する。検証方法を考え、結果を見て考察する。個別の知識だけでなく、この一連の流れを新しい環境でも使えました。

実際に働いてみると、自分以上にその領域へ詳しい人は、それほど多くありませんでした。良い意味で、『こんなもんなんだ』と感じました。

外の世界には、自分より詳しい人ばかりがいると思っていたのかもしれません。もちろん、新しく学ばなければならないことはあります。それでも、以前の経験が通用する場面を実際に見たことで、必要以上に自分を低く見積もらなくなりました。

転職しても、理想の環境になったわけではない

1回目の転職で、すべてが良くなったわけではありません。

建屋は以前より古く、立地も田舎でした。食堂の食事も、以前のほうがおいしいと感じました。日々働く環境としては、悪くなったと思う部分もあります。年収面でも、このまま働いた先が明るく見えたわけではありません。

LinkedInで転職について投稿したときも、企業文化の違い、聞いていた仕事と実際の配属の違い、入社後に『ここは自分のいる場所ではない』と感じた経験など、さまざまなコメントが寄せられました。

転職すれば、自動的に理想の会社へ移れるわけではありません。外からは分からず、入社して初めて気づくこともあります。

ただ、良くなかった点も含めて比較できたことで、次の会社では何を確認し、何を重視したいかが以前より分かるようになりました。

引っ越しのリスクとメリットを、妻とExcelに書き出した

引っ越しによる家族への影響は、一人では決めませんでした。

妻としっかり話し、転職と引っ越しによって考えられるリスクとメリットを二人で明確にしました。話した内容はExcelへ書き出しました。

仕事の成長、収入、生活環境、引っ越しによる負担など、頭の中だけで考えていると、期待と不安が混ざります。書き出すことで、何が分かっていて、何がまだ分からないのかを二人で確認できました。そのうえで、お互いが納得して判断しました。

エン株式会社が2026年に『エン転職』の利用者1,562人を対象に行った調査では、転職活動の不安を解消するために家族へ相談した人は、30代で38%でした。転職は本人の仕事の問題ですが、勤務地や生活が変わる場合、家族にとっても大きな選択になります。

私の場合は、『自分が挑戦したいから理解してもらう』というより、二人で判断材料を作ったことが大きかったと思います。

理想の職場より、『自分で選べる』という実感が残った

自分はほかでもやっていける。自分のスキルや経験は通用する。

1回目の転職を経験して残った実感

働く環境には、以前より悪くなったと感じる部分もありました。年収の先が見えたわけでもありません。

それでも、1回目の転職には価値がありました。やってよかったと思っています。

大きかったのは、『自分はほかでもやっていける』『自分のスキルや経験は通用する』と実感できたことです。

転職前は、今の会社を出たらどうなるか分かりませんでした。転職後は、少なくとも自分が一つの会社でしか働けない人ではないと分かりました。

自分で人生を選択している。自分で舵を取っている。その実感は、私にとって代えがたい体験でした。

転職を決める前に、社外と話してみる

当時の自分へ伝えるなら、まずは転職エージェントと話してみるように勧めます。

次に、完成度が低くても職務経歴書を書いてみます。求人を見て、第三者と話し、自分の経験を文章にすると、できることと足りないことが少しずつ見えてきます。

その結果、『今は転職しない』と決めても構いません。現職でどのような実績を積めば、半年後や1年後に選択肢が増えるのかを考えられます。

転職活動を始めることと、会社を辞めることは同じではありません。

私の場合は、動き始めた時点から停滞感が薄れました。そして実際に一度転職したことで、『必要なら次の選択肢を取れる』と思えるようになりました。