シックスシグマは、難しい統計手法の名前ではない

最初に押さえたいのは、シックスシグマが一つの計算方法ではない、ということです。

シックスシグマは、工程や仕事のばらつきを減らし、狙った結果を安定して出すための改善体系です。顧客や後工程が困っていることを決め、現状を測り、原因を確かめ、対策後も状態が続くように管理します。

その中心にあるのがDMAICです。Define、Measure、Analyze、Improve、Controlの頭文字で、既存工程の問題を順番に解いていきます。ISO 13053-1でも、この5段階がシックスシグマの代表的な方法として整理されています。

Gage R&R、管理図、Cp・Cpk、実験計画法などは、DMAICの中で使う道具です。全部使う必要はありません。今どの段階で、何を確かめたいのかによって選びます。

DMAICでは、いきなり対策から始めない

現場では原因の見当がついていることもあります。それでも、問題と現状を確認せずに条件を変えると、効いた理由が分からなくなります。

段階ここで決めること
Define|定義誰が何に困っているか。どの工程・製品・期間を対象にし、何を目標にするか
Measure|測定測定値を信頼できるか。何を1件と数え、現在どの程度起きているか
Analyze|分析製品、設備、材料、方法、時間など、どの違いが結果と結び付いているか
Improve|改善どの対策が効くか。他の品質や安全、処理能力へ悪影響がないか
Control|管理誰が何を監視し、異常が出たらどこまで戻って確認するか

たとえば不良率が上がったとき、すぐに装置条件を変えるのがImproveです。その前に、不良の定義がそろっているか、測定方法が変わっていないか、特定の製品や時間帯へ偏っていないかを確認します。

Analyzeまで進んでも原因が見えなければ、Measureへ戻ってデータを取り直します。DMAICは一方通行ではありません。ただし、原因を確かめないまま対策だけを繰り返す状態は避けます。

6σは、規格までの余裕を標準偏差で見る考え方

σ(シグマ)は標準偏差を表します。測定値が平均の周りにどの程度散らばっているかを見る数字です。

規格に対する分布を3つの状態で比べる曲線は考え方を示す模式図です。実際の工程能力は、時系列、測定方法、分布の形を確認してから評価します。
  1. ばらつき中心は合うが、散らばりが大きい

    平均は目標付近でも、規格端へ近い測定値が増えています。

    ばらつきを生む条件を分けて見る
  2. 中心ずれまとまっているが、中心がずれる

    散らばりは小さくても、上限側の余裕が少なくなっています。

    設定値や時間変化を確認する
  3. 工程能力散らばりが小さく、中心も合う

    両側の規格まで余裕があります。安定性は時系列で別に見ます。

    管理図で状態を維持する

Cpは、工程の広がりに対して規格幅がどれくらいあるかを見ます。Cpkは、そこへ中心ずれも加えた指標です。平均が規格の中央から外れると、Cpが高くてもCpkは低くなります。

ただし、Cpkだけを見ても工程が安定しているかは分かりません。規格限界は製品の要求、管理限界は工程の時系列データから決まります。この二つは別のものです。

何を調べたいかで、使うツールは変わる

品質データが手元にあっても、最初からCpkを計算すればよいとは限りません。

測定から条件改善までの順番前の確認が十分なら、必要なところから始めて構いません。迷ったときの基本順序として使ってください。
  1. 01測定値を信頼できるか

    Gage R&Rで部品差と測定誤差を分ける

  2. 02工程は安定しているか

    管理図で時間変化と特殊原因を見る

  3. 03規格まで余裕があるか

    Cp・Cpk、Pp・Ppkで工程能力を見る

  4. 04どの条件が効くか

    層別やDoEで原因と改善条件を確かめる

測定誤差が大きければ、工程の差に見えていたものが測り方の差かもしれません。工程が時間とともに動いていれば、一つのCpkで将来の状態を説明するのも難しくなります。

測定系と安定性を確認して、それでも規格に対するばらつきが大きいなら、工程そのものへ手を入れます。因子が多く、一つずつ条件を変えても関係が見えにくいときは、DoEが候補になります。

半導体の検査工程なら、どう進めるか

説明用に、ある検査工程で再検査が増えた場面を考えます。実在の製品や工程条件を示すものではありません。

最初に決めるのは対策ではなく、再検査を何と数えるかです。同じ対象を二度測ったら1件なのか、判定をやり直した回数なのか。対象製品と期間もそろえます。ここがDefineです。

次に、判定方法や測定装置が途中で変わっていないかを確認します。製品、装置、材料、時間帯などで分けてみると、全体では見えなかった偏りが出ることがあります。時刻が一致しただけでは原因と決めず、現物や追加データで確かめます。

対策後は、平均の再検査率が下がったかだけで終わりません。製品構成が変わっていないか、効果が続いているかを見ます。最後に監視する数字、確認頻度、異常時の動きを決めて、ようやくControlまでつながります。

PDCAやリーンと、きれいに分ける必要はない

改善手法は競わせるものではなく、課題に合わせて使い分けます。

PDCAは、計画して試し、結果を確認して次へつなぐ広い改善サイクルです。DMAICはその中でも、問題の定義、測定の信頼性、原因の検証を細かく区切っています。原因候補が多い課題や、失敗したときの影響が大きい課題で使いやすい進め方です。

リーンは、待ち、運搬、仕掛かり、手戻りなどのムダと流れに注目します。シックスシグマは、ばらつきや欠陥をデータで追います。両方を組み合わせたものがリーンシックスシグマです。

小さな不具合まで、すべて大規模なDMAICプロジェクトにする必要はありません。原因が明らかで安全に戻せる改善なら、短く試して確認する方が現実的です。

数字が出ても、原因が分かったとは限らない

シックスシグマで読み違えやすい点を、最後にまとめます。

相関があること、発生時刻が近いこと、統計的な差が出たことは、原因を考える材料になります。ただし、それだけで原因が証明されたわけではありません。工程の仕組み、現物、再現性を一緒に見ます。

また、統計的には差があっても、工程上ほとんど意味のない差かもしれません。品質への影響だけでなく、安全、コスト、処理能力、保全性、他の特性への影響まで見て対策を選びます。

  • 問題を「品質を上げる」のような広い言葉で始めない
  • 測定方法とサンプリングを確認せず、数字だけを比べない
  • Cpkだけを改善目標にしない
  • 対策後の監視方法と異常時の動きを残す

シックスシグマでよくある質問

シックスシグマとは簡単にいうと何ですか?
改善する問題を決め、信頼できるデータで原因を確かめ、対策後の状態を維持するための進め方です。既存工程の改善ではDMAICがよく使われます。
6σは必ず3.4 DPMOを意味しますか?
必ずではありません。3.4 DPMOという値には、長期に平均が1.5σ動くという仮定が含まれます。実際の欠陥率は分布や中心ずれ、欠陥機会の定義で変わります。
シックスシグマとCp・Cpkは同じですか?
同じではありません。Cp・Cpkは規格に対する工程能力を見る指標です。シックスシグマは、問題の定義から原因分析、改善、維持までを含みます。
管理図とCp・Cpkはどちらを先に見ますか?
一般には、測定系と工程の時間的な安定性を確認してから工程能力を見ます。工程が不安定なときは、一つのCp・Cpkだけで将来の状態を判断しにくいためです。
シックスシグマには資格が必要ですか?
考え方やDMAICを使うだけなら、必ずしも外部資格は必要ありません。Yellow Belt、Green Belt、Black Beltなどの役割や要件は、組織・認定制度ごとに異なります。

まず、自分がDMAICのどこで止まっているかを見る

手法を一つずつ覚えるより、今の課題で何が分かっていないかを考える方が、次に学ぶ内容を選びやすくなります。

測定値を信頼できないならGage R&R、時間変化を見たいなら管理図、規格への余裕を見たいならCp・Cpk、複数の条件を比べたいならDoEへ進みます。シックスシグマは、その順番をつなぐ地図として考えると分かりやすくなります。